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1)戦術学習モデル
従来の球技授業では、実際のゲームと無関係に個々の技術が指導され、それらがまるでゲーム
に生かされていないケースが多かった。また、これらの能力育成の目標を放棄して、低レベルの
ゲームを楽しむだけで終わっている授業も少なくなかった。そこで、このような球技授業の問題
状況を打破する試みとして、戦術学習モデルがグリフィンによって提唱された(グリフィン,1999)。
戦術学習モデルは、1982年に英国のラフバラ大学のBunkerとThorpeによって提唱された
TGfU(Teaching Games for Understanding)を始まりとして、今日までその理論的・実践的研究が
積み重ねられてきた。またTGfUは、技術練習の繰り返しよりも子どものゲーム理解を重視してお
り、技術の必要性や関連を子ども達が見通せるようにすべきであるとともに、子ども達の戦術の
鑑賞能力の向上をも期待するものであった(グリフィン,1999)。本単元ではその特徴に当てはめて
単元を構成することにした。
2)スポーツ教育モデルの導入
スポーツ教育モデル(シーデントップ,2003)はアメリカのシーデントップによって提唱された
モデルである。スポーツの教育モデルの目的は「子どもたちを真の意味でのプレイヤーになるよ
うに育成すること」である。真の意味でのプレイヤーとは、満足にゲームに参加できる技能と戦
術を身に付けた「有能な」スポーツ人、ルール・儀礼・伝統等を理解し、見識を備えた「教養の
ある」スポーツ人、スポーツ文化を維持・保護・発展できる「情熱的な」スポーツ人を指す。ま
た、スポーツ教育モデルの具体的な目標はスポーツへの参加を通して①技能と体力、②戦術的能
力、③計画と運営、④リーダーシップ、⑤協力的活動、⑥儀礼の尊重、⑦スポーツの問題解決能
力、⑧実践的な知識、⑨スポーツへの自発的な参加、を向上させることである。スポーツ教育モ
デルの基本的特徴はシーズン、チームへの所属、公式試合、記録の保持、祭典性、クライマック
スのイベント6つの要素がスポーツへの実践へつながることである。本単元ではこれらの要素を含
めて単元を構成することにした。
①シーズン
→意味ある経験をするために十分の長さをもった単元で実施する。今回は11時間単元で実施する。
②チームへの所属
→チームのメンバーは固定し、単元を通して維持される。